本の紹介

「DIE WITH ZERO という本の感想」

◎はじめに

今回は、著者ビル・パーキンス氏が書いた本を児島修先生が翻訳した名著「DIE WITH ZERO」を読んだ感想について話していきます。この本は、ほかの本とは違い経済的自立に重きを置いた主張ではなく、”自分の人生をよりよく生きるためには”にフォーカスした内容となっている。一見、宗教的な心の持ちようを語っているだけの本に聞こえるかもしれない。しかしこの本は、自分の人生の幸福度を最大化するためにどんなお金の使い方をすればいいかを分析し、根拠を持って主張している本である。これを読んだ私は、自分の生き方に近いものを感じ、より人生に対し積極的になれると奮い立たせることができた。この本は若い人が読むべき教科書であるし、中年にも読んでほしい逸品である。概要を説明しつつ、筆者の感想をまとめておく。

1,なんのために働いているのか?

 筆者は、銀行をちょっとしたことでクビになり、別の会社でブローカーとして働く。その後出張先で新たな可能性を見つけ、移住し多くの経験をして人生を豊かにしていった。筆者の自叙伝、つまり経験に基づいて、この本でアドバイスをしている。そこで問いているのは、「何のために働いているのか?」ということだ。少なからずこれを読んでいる読者も「俺は何のために働いているのだろう。」「私はこんなに残業して辛いのに、給料が上がらない」など同じような悩みを抱いたことがあるだろう。いったい我々は何のために働いているのだろうか。様々な理由があると思う。「子供や家族を守るため」「買いたいものを買うため」「親においしいものを食べてもらいたいため」など明確な目的があるならまだいいだろう。しかし、「ただ漠然と働いて生きている」、「今の働きに満足はないが不満もない」など明確な目的もなく、働いている人も私を含め少なからずいるだろう。「この職場は福利厚生も安定していていいからこのままでいよう」「転職とかすると失職したり、再就職できないかもしれないし今のままで行こう」そう考えて現状維持をしている人もいるだろう。そうやって過ごしていく日々は果たして”幸せ”なのだろうか。1度しかない人生で働き続ける人生は幸せなのだろうか。

2,若いうちにリスクをとってチャレンジをする。

 私の小学生のころの先生はよくこう言った。「失敗をしてもいいから、チャレンジしよう。学校は失敗をするところだよ。」私たちは失敗をしてもよいということを教わってきているはずだが、年齢が上がれば上がるほど、それは許されなくなってくる。「結婚して大事な人ができた。」、「子供が生まれて家族ができた。」など社会的責任がのしかかってくるからだ。誤解しないでほしいのがこれ自体が悪いのではない。筆者が言っているのは、”やるべき時期にやるべきことができているか”ということを話している。例えば、富士山登頂をする目標があるとしよう。それを20代で達成するのと、60代で達成するのではどちらの方が達成しやすいか。答えは20代だ。(中にはとてもお元気でいらっしゃるジェントルマンもいるが)富士山登頂は体力があるうちでないと経験が難しく、満期退職後の体力が衰えた状態では中々チャレンジできないという課題がある。そこで筆者は、お金がない若いうちでも、その時期にしかできないことには多少のリスクをとってでもチャレンジすることを提唱している。万が一何かしらの失敗があったとしても、若いうちではどうとでもなるが、年を取ってからだと社会的責任などでうまく復帰できない可能性が高くなる。そのため、若いうちにできること、具体的には年代に合わせてやるべきリストを作成することを推奨している。20代~30代では、体力があるので、体力があるうちにできる経験をする。40代~は資産が安定してくるので、リッチな経験をできるようにする。そうやって人生の経験のタイミングをしっかりと踏んでいくことで、人生の幸福度を最大化できると話す。

3,死後のお金の価値は低い。

日本人の生き方の美徳とされてきた文化として、質素・倹約に努めるというものがある。これは日本人としてとても良い考え方であるし、美しいと思う。しかし、それが死後まで続くのはやりすぎである。人は「将来大きな病気にかかり、高額な医療費がかかるかもしれない。」「予期せぬ事態で数百万失うことがあるかもしれない。」など不安に駆られ、貯金をしていく。もちろんこの考え方はとても良い。しかし未来への不安からお金を貯めこんで、いざ死を迎えるときに使いきれないお金が残って亡くなるということが多い。「それを子供や孫に残せるからいいじゃないか」という考えもある。しかし冷静に分析してみると、それはお金を受け取る側としては、価値が相対的に低くなっていると考える。例えば、ある2つの状況を比較する。1つ目は20代~30代の起業に積極的にチャレンジしようと考えている時期、あるいは子供ができて生活を切り詰めている時期に財産を与えること。2つ目は、自分が死ぬとき(ここでは80歳まで生き、子供とは25歳差と想定する。つまり財産を受け取る側は55歳)に財産分与で55歳のもうすぐ仕事を辞めようか考えている息子・娘に渡す。この二つで相対的に考えたときに、もらう側としてより嬉しいのはどちらだろうか。答えは、前者だ。様々なチャレンジには多くの資金が必要になってくる。しかし若いうちはお金がなく、チャレンジする時間を犠牲にしてお金を稼ぐ人も多い。そんな時期に財産分与でお金が入ると、時間を犠牲にせずチャレンジできる。後者の方だと、55歳である程度自分でお金を稼ぐことができているので、親の財産が入ってもそれは臨時収入くらいにしか価値がなく、相対的にお金の価値が変わってくるのだ。つまり、財産を分け与えるときは、適切なタイミングで生前分与が望ましい。そうすることによって、受け取る側は最大限にそのお金の価値を引き出すことができ、人生の幸福度を高める活動に投資できるのだ。

◎感想

この本では、”人生の幸福度を上げるための方策”を得ることができた。具体的には次の3つだ。

・お金を使うタイミングで価値が変わる。(若い時の方が価値ある使い方ができ、選択肢も豊富)

・人生の幸福度を高めるには、タイミングに応じた経験をすることが大切。

・思い出は経験の配当として、一生の財産となる。

特にこの中でも、”経験の配当”という言葉に自分の中の人生観とマッチするものがあると感じた。私は友人とよく昔話をしながら盛り上がる。しかも何度も同じ話をしている。しかし飽きることなくその話をして幸福を感じている。これこそが人生の配当であり、人生を豊かにするものだとわかった。社会人として働き始めると、周囲の目や期待、社会的責任などに縛られ、お金を稼ぐこと=幸せという等式に支配されてしまいがちだ。その時にこの本をきっと思い出すだろう。そして何のために働いているのかと問われたときにはきっとこう答える。「経験の配当を得るためです。」なぜなら経験の配当=幸せであるからだ。

今週はこれにておしまい。おいしかった!ご馳走様!!😊

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